週刊ツギノテ #13 — 祝日をまたぐと、AIは6回中5回ずれた週。
要点:週刊ツギノテ、十三号。今週は、日付と時刻の数え方でAIがずれる場面が目立った。祝日をまたぐ営業日の依頼文を7パターン用意すると、祝日をまたぐ6パターンのうち5パターンで答えが1日ずれ、またがない控えの1パターンだけ一致した。海外拠点との会議依頼を固定の時差で計算させると、夏時間(サマータイム)が適用中の3パターンで答えが1時間遅くずれ、夏時間明けの3パターンと夏時間のないシンガポールの控えは一致した。一方、生成AIに同じ質問を40回投げて計190個の答えを照合すると、同じ依頼文の10回は60個すべて一致し、選択肢の並び・問題の順番・言い回しを変えても答えは動かず、動いたのは採点の点数だけだった。日付・時間という「数える」作業は崩れ、同じ質問への答えという「ぶれやすそうに見える」作業は崩れなかった。ほかに、議事録・文字起こしAI3社(Notta/Rimo Voice/Fireflies.ai)は月額の安さと「録音データをAIの学習に使わないか」が一致せず全プラン共通で学習なしを明記していたのは1社だけだったこと、ChatGPTの共有リンクは一括削除しても閲覧者が取り込んだ会話は相手側に残ること、経費精算のAI-OCR5社のうち価格を公開していたのはマネーフォワードとfreeeの2社だけだったこと、引き継ぎ書は7項目を満たしていても「判断に迷った場面」という項目が抜け落ちやすいことを扱った。コラムでは、宇宙人をAIに置き換えても『未知との遭遇』などの物語はほとんど成立するが証拠映像の場面だけ意味が変わること、新しいAIを誇張して紹介する「AI驚き屋」が嫌われながら増える構造、合成データによるモデル崩壊を『マトリックス』の世界観と重ねて読む一本を発行した。国会ウォッチでは、生成AI・AI規制の2語は該当0件だったが、参議院の「デジタル社会の形成及び人工知能の活用等に関する特別委員会」(前の国会でも継続して設置されている委員会)が、新しい国会(第222回)の初回会合を10月5日に開き、委員長を選任していたことを確認した(実質審議はまだ)。早見表は、ドル円レートが157.95円(10月8日時点、1ドル=158.01円からの変動は0.06円)とほぼ横ばいで、確認できる公式の価格改定も今週は無く、変更は無し。FUTURE INDEXは今週も据え置いた。
祝日をまたぐと、答えが1日ずれた。
時差をまたぐと、答えが1時間ずれた。
週刊ツギノテ、十三号。今週発行した十本を、編集長のわたしが振り返る。
同じ質問を40回繰り返しても、答えはほとんど動かなかった。動いたのは、日付と時刻をまたいだときだけだった。数えることと、答えることは、別の力らしい。
祝日と時差で、答えが動いた——実測二本
祝日をまたぐ「3営業日後」、AIの答えは6回中5回ずれた(HOW・実測/ツカウ)。営業日がらみの依頼文7パターンのうち、祝日をまたぐ6パターンで土日だけを除く数え方と祝日も除いた正しい数え方の答えが1日ずれた。祝日をまたがない控えの1パターンだけ一致した。
時差「14時間」でAIに計算させたら、7パターン中3パターンでずれた(HOW・実測/ツカウ)。ニューヨーク・ロンドン・ロサンゼルスの固定の時差でAIに計算させ、各都市の夏時間を踏まえた正しい時刻と突き合わせた。夏時間が適用されている期間の3パターンで、答えが実際より1時間遅くずれた。
動かなかった答えと、抜け落ちた場面——検証室とHOW業務
生成AIは「毎回ちがう答え」を返すのか。40回投げて数えた(CHECK・検証室/ハカル)。claude-opus-5-5を独立した40回の起動に投げ190個の答えを照合。同じ依頼文の10回は60個すべて一致し、選択肢の並び・問題の順番・言い回しを変えても答えは動かなかった。動いたのは採点の点数だけで、「厳しめの審査担当です」という一行を足すと基準値8点のところ2回とも7点になった。
引き継ぎ書が抜かすのは手順でなく、「迷った場面」だった(HOW・業務/ツカウ)。引き継ぎ書は業務の全体像・手順・トラブル対応履歴など7項目を満たしていても、「判断に迷った場面」という項目は一般的なガイドに独立して存在しない。AIに作らせるときも、この一点を名指しで指示しないと抜け落ちる。
残る写しと、見えない値段——検索起点とPICKS二本
ChatGPTの共有リンク、一括削除しても残る「写し」の条件(検索起点/ハカル)。共有リンクはURLを知る人なら誰でも開け、有効期限も閲覧者の制限も無い。一括削除は「設定」→「データコントロール」→「共有リンク」から行えるが、閲覧者が自分の履歴に取り込んだ会話はリンクを消しても相手側に残る。
経費精算のAI-OCR5社のうち、価格を出しているのはたった2社だった(PICKS/ツカウ)。経費精算のAI-OCRサービス5社を公式サイトで確認すると、月額の基本料金を明記していたのはマネーフォワードとfreeeの2社だけ。残り3社は「お問い合わせください」が基本線だった。
議事録AI3社、価格差より割れたのは「学習に使うか」の条件だった(PICKS/ツカウ)。議事録・文字起こしAI3社(Notta/Rimo Voice/Fireflies.ai)の公式サイトを確認すると、月額の安さと「録音データをAIの学習に使わないか」は一致しなかった。全プラン共通で学習に使わない設計を明記していたのはRimo Voiceだけだった。
役を置き換えても、崩れるか崩れないか——コラム三本
ディスクロージャー・デイの宇宙人を「AI」に替えたら、物語は崩れるか(COLUMN/エガク)。『未知との遭遇』『SUPER8』『インターステラー』『ディスクロージャー・デイ』は、宇宙人の席にAIを座らせても大半の場面がそのまま成り立つ。意味が変わるのは証拠の映像が流れる場面だけで、鮮明な映像ほどまず生成AIを疑われる2026年の事情と重なる。
「AI驚き屋」は、なぜ嫌われながら増えるのか(COLUMN/ツムグ)。新しいAIを「やばすぎる」「神」「最強」と誇張して紹介する発信者が俗語化するほど増えた。驚きが速く広く運ばれるのは情報の新しさと感情のためで、虚偽情報の拡散を追ったMITの研究とも符合するが、検証も再現もない誇張の繰り返しはやがて信用を失う。
合成データで「本物」が尽きる日を、『マトリックス』は実は先に見せていた(COLUMN/エガク)。AIが生成したデータで学習を繰り返すと出力がやせていく「モデル崩壊」。人間が書いたテキストの在庫は2026〜2032年に尽きると予測され、各社は合成データで穴を埋めつつある。外部の本物データを1点混ぜれば防げるという2026年5月の研究も、確認できたのは単純な統計モデルだけだった。
SIGNALSと国会ウォッチ——委員会が新しい会期の初回会合を開いた
今週のSIGNALSには、ニューヨーク市議会が10月5日にOpenAI・Anthropic・Google・Metaを招いた公聴会を開く件も並んだ。AIのリスクを巡り各社に宣誓証言を求める内容で、国内外を問わずAIの扱いを制度の側から問う動きが続いている一週間だった。
国会会議録の確認(生成AI・人工知能・AI規制の3語での照会、取得はブラウザ経由)は、この一週間(10月2日〜10月9日)、「生成AI」「AI規制」の2語は該当0件だったが、「人工知能」の1語で1件を確認した。10月5日、参議院の「デジタル社会の形成及び人工知能の活用等に関する特別委員会」が、第222回国会の初回会合(第1号)を開き、委員長を選任していた。この委員会は前の国会(第221回・特別会)でも科学技術・イノベーション関連法案や情報通信技術を活用した行政推進法の改正案などを審議してきた、新設ではなく継続して設置されている委員会である。10月5日の回は委員長選任のみで、AI政策そのものの実質審議はまだ始まっていない。次の国会でのこの委員会の動きは、編集部内の記録として引き続き追う。
早見表——ほぼ横ばい、変更は無し
早見表生成AIモデル料金比較・早見表は、OpenAI・Anthropic・Google・xAIの公式料金ページを確認しようとしたが、今週は確認できる公式発表の価格改定を見つけられなかった。第三者の集計サイトにはGoogle Gemini・xAI Grokの数値がいくつか出ていたが、サイトごとに数字が食い違い、公式ページそのものへは届けなかったため、今回は反映を見送った。円換算レートは1ドル=157.95円(10月8日・七十七銀行の対顧客仲値)で、前回点検の158.01円(9月24日時点)から0.06円のほぼ横ばい。AIサービス枠の追加候補(Perplexity・NotebookLM)も公式ページを確認できず見送った。本表の数値は確認できたものしか載せない、という線を今回も優先した。
FUTURE INDEX——数える作業の弱さは、品質監査の追い風にした
指数は五項目とも据え置いた。祝日・時差という日付計算の実測二本は、F-03「AI生成物の品質監査の一般化」(0.76)が扱う「出力を疑って確かめる」という構えそのものを裏づける材料だが、本紙が自分で測った単一の事例であり、他社・他組織に一般化された監査の仕組みが広がった証拠ではないため、今回も動かす根拠にはしなかった。一方で、生成AIが同じ質問には40回ともほぼ動かなかったという結果は、F-01「エージェントAIの職場常駐」(0.92)にとって再現性の面では追い風だが、常駐が進んだという直接の証拠ではない。AI驚き屋の増加はF-02「シャドーAI統制の標準化」(0.86)が指す「統制されていない使われ方」の一種だが、組織の中の統制の話ではなくSNS上の発信者の話であり、今回は対象外とした。
次に崩れる「数える作業」を探す
二つある。ひとつは、日付・時刻のような「数える」作業でAIがずれる場面が、次はどんな依頼文で見つかるかを見ている。ふたつめは、早見表のAIサービス枠——Perplexity・NotebookLMを含め、公式ページを機械で確認できる状態になっていないか、来週も確かめる。
同じ質問には動じず、日付をまたぐと動く。この境目がどこにあるのかを、来週も実測で探す。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.10.09
本記事は、編集責任者の指示のもとAI編集部が執筆し、編集責任者が内容を確認しています。掲載の判断と内容の責任は編集責任者が負います。誤りを見つけられた場合はお問い合わせからご指摘ください。訂正の手順は訂正ポリシーに定めています。
参考:今週振り返った記事(出典は各記事本文の出典欄)
・10/3 経費精算のAI-OCR5社のうち、価格を出しているのはたった2社だった
・10/4 ディスクロージャー・デイの宇宙人を「AI」に替えたら、物語は崩れるか
・10/5 祝日をまたぐ「3営業日後」、AIの答えは6回中5回ずれた
・10/6 ChatGPTの共有リンク、一括削除しても残る「写し」の条件
・10/6 時差「14時間」でAIに計算させたら、7パターン中3パターンでずれた
・10/7 生成AIは「毎回ちがう答え」を返すのか。40回投げて数えた
・10/7 引き継ぎ書が抜かすのは手順でなく、「迷った場面」だった
・10/8 「AI驚き屋」は、なぜ嫌われながら増えるのか
・10/8 合成データで「本物」が尽きる日を、『マトリックス』は実は先に見せていた
・10/9 議事録AI3社、価格差より割れたのは「学習に使うか」の条件だった
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