社内の文書をAIに読ませる方法は4つあり、
最初の分かれ目は権限をやり直さずに済むかどうかだ。
この記事の読者:情シス・DX担当(「社内の資料を読めるAIにしてくれ」と言われて、どこから手を付けるか決めていない人)
要点:方式は4つあります。①都度添付 ②ノートブック型(NotebookLMなど)③業務スイートの検索連携(Microsoft 365 CopilotやWorkspaceのGemini)④自前RAG。選ぶ軸は5つで、いちばん効くのは「既存の権限をそのまま使えるか」です。部署ごとに権限が細かい共有ドライブやSharePointが対象なら③、対象が数十本で担当が1人なら②、明日の会議に間に合わせたいなら①、更新が毎日で外部システムから引くなら④。対象の本数を数えれば、大半は決まります。
まず、依頼のされ方がだいたい同じです。
「社内の資料を読めるAIにしてほしい」。
で、この一文には方式が書かれていません。
読ませる方法は4つあって、どれを選ぶかで作業量が10倍変わります。私が最初に確かめるのは、対象の本数と、その文書の権限がいまどうなっているかです。
順番に置いていきます。
選ぶ前に、軸を5つ決める
製品名から比べ始めると迷います。先に軸です。
- 既存の権限をそのまま使えるか。見せてよい人にだけ見える状態を、作り直さずに済むかどうか
- 更新を誰が追うか。文書が差し替わったとき、入れ替える人がいるのか、仕組みが拾うのか
- 出典が答えに付くか。どの文書の何行目から答えたのかが示されるか
- 対象の本数の上限。10本か、50本か、数千本か
- やめたときに何が残るか。撤退したら手元に何もなくなるのか、資料は残るのか
1つめが最大の分かれ目です。
権限を作り直す作業は、AIの導入とは別の仕事です。ここを数えずに始めると、AIの話をしていたはずが共有設定の棚卸しになります。
4つの方式を、軸で並べる
| 方式 | 既存の権限 | 更新を追う人 | 出典 | 本数の目安 |
|---|---|---|---|---|
| ① 都度添付 会話ごとにファイルを渡す | 使わない (渡す人が判断する) | 渡す人 | 渡した文書の中の話なので追える | 1回に数本 |
| ② ノートブック型 資料を置いた場所に質問する | 使えない (共有した相手は全ソースを読む) | 置いた人が入れ替える | 引用が付く | 無料50・Pro 300ソース |
| ③ 検索連携 いま置いてある場所を読ませる | そのまま使う | 仕組みが拾う | 参照したファイルが示される | 置いてある全部 |
| ④ 自前RAG 索引を作って引かせる | 自分で作る (作らなければ無い) | 設計した仕組み | 設計次第 | 設計次第 |
表のうち、公式ドキュメントで確認できた数字と挙動を補足します。
②の上限。NotebookLMのヘルプでは、1つのノートブックに含められるソースは無料で最大50、Proにすると300。1つのソースは最大50万語、アップロードできるファイルは200MBまでと書かれています(2026年8月23日確認)。チャットの回答はソースのデータだけから作られ、ソースに無いことは答えない、とも明記されています。
③の権限。Microsoft Learnでは、Copilotが触るのは「個々のユーザーがアクセスを許可されているデータのみ」で、APIの結果はサインインしているユーザーがアクセス許可を持つコンテンツにトリミングされる、とされています。要求に関連する内容でも、権限がなければ応答に出てきません。セマンティックインデックスもユーザーIDベースのアクセス境界を優先します。
ここは読み方を間違えやすいところです。
「権限のあるものだけ」は、「見せてよいものだけ」という意味ではありません。いまの共有設定が広すぎるなら、その広い範囲がそのまま答えに出ます。既存の権限をそのまま使えるのが③の最大の利点で、同時に唯一の危険です。共有設定の棚卸しは共有の締め方の回と、検索の見え方を扱ったこの回で扱いました。
④について一点。国のAI事業者ガイドライン(第1.2版・2026年3月31日)では、RAGは「学習」ではなく「推論」の一形態として整理されています。社内の文書を読ませることが、そのままモデルの学習になるわけではない、という位置づけです。この整理は社内ガイドラインの回で詳しく扱っています。稟議で「学習させるのか」と聞かれたときに効きます。
用途別の結論
1位は決めません。場面で分かれます。
共有ドライブやSharePointが対象で、部署ごとに権限が細かいなら③。権限を作り直さずに済む方式は、この4つの中でこれだけです。人数分の有料ライセンスが要りますが、権限設計をやり直す工数と比べてから判断してください。
対象が数十本、担当が1人、まず試したいなら②。無料枠の50ソースが、そのまま試作の上限になります。50本を超えるなら、上げる資料を選ぶ作業が発生します。
明日の会議に間に合わせたいなら①。手が遅い方式ではありません。いちばん速い方式です。ただしPDFの中身は渡す前に確認してください。段組みのある資料は読み取りの時点で崩れます(実測した回)。
更新が毎日で、外部システムから引く必要があるなら④。ここまで来ると、AIの話より先にデータの置き場所の話になります。社内で持つ人がいないなら、②か③で回してから考えるほうが早いです。
選ばなくていい場合
2つあります。
対象が10本以下なら、①で足ります。索引を作る仕組みを入れる意味がありません。
「探しても出てこない」の原因が、命名と置き場所にある場合。これはAIの前の工程です。③はもともとの検索の索引を使うので、検索で出てこない文書は、AIに聞いても出てきません。ファイル名が「最新版_20250401_修正.docx」で埋まっているなら、まずそこを片付けたほうが効きます。
つまずく場所
古い版が残っている。AIは新旧を選びません。旧版と新版が同じ場所にあれば、どちらから答えても仕様どおりです。②なら上げるソースを選べますが、③は置いてあるものを読みます。改定履歴のあるフォルダは、先に整理するか、対象から外してください。
出典が出ない状態で稟議に貼る。回答だけを持っていくと、根拠を聞かれた時点で止まります。②と③は参照元が出るので、それを添えて出す運用にしてください。
本数の上限を先に確認しない。②で試して手応えがあり、全社に広げようとした段階で上限に当たる、という順番になりがちです。試作の前に本数を数えるほうが安全です。
入り口を決めずに配る。方式を決める前に「便利なので使ってみて」と広げると、私物のアカウントに資料が上がります。この順番の話は前日の回で扱いました。
次の一手
今日やることを1つだけ。
対象にしたい文書の本数を数えてください。
10本、50本、数百本。どこにいるかで、上の4つはほぼ絞れます。製品の比較検討に入る前に、この数字を持っておくほうが話が早く終わります。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.23
本記事はAI編集部が執筆しています。掲載の判断と内容の責任は編集責任者が負います。誤りを見つけられた場合はお問い合わせからご指摘ください。訂正の手順は訂正ポリシーに定めています。
参考にした主な出典
・Microsoft Learn「Microsoft 365 Copilot のデータ、プライバシー、セキュリティ」(learn.microsoft.com)——Copilotは既存のロールベースのアクセス制御等に基づき、個々のユーザーがアクセスを許可されているデータにのみアクセスする
・Microsoft Learn「Microsoft 365 Copilot API のセキュリティと認証」(learn.microsoft.com)——APIの結果はサインインしているユーザーがアクセス許可を持つコンテンツのみにトリミングされ、権限のないコンテンツは要求に関連していても応答に現れない
・NotebookLM ヘルプ「よくある質問」「ノートブックの新しいソースを追加または検索する」(2026年8月23日確認/support.google.com)——ソースは無料で最大50・Proで300、1ソース最大50万語、ファイルは200MBまで。チャットの回答はソースのデータのみを使用し、ソースに無いことは答えない
・「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」改定のポイント(PwC Japanグループ・2026年6月3日/pwc.com)——第1.2版でRAGは「学習」ではなく「推論」の一形態として位置づけられ、主にAI提供者の役割として整理された。同ガイドラインは非拘束的な文書で、事業者に新たな義務を一律に課すものではない
※ 4方式の分け方、5つの軸、用途別の結論は、上記の公開仕様をもとに本紙が組んだ整理です。特定の組織で効果が確認されたものではありません
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