禁止しても、4割は使い続ける。
シャドーAI対策は、規程を書く前に「公式の入り口」を決める。
この記事の読者:情シス・DX担当(社員が勝手に使っている生成AIを、どう扱うか決めろと言われている人)
要点:禁止しても使用は止まりません。業務で生成AIを使う会社員360名への調査で、勤務先が禁止した場合でも37.8%が利用を続けると答えました。すべて会社に申請・共有している人は18.9%です。先に作るのは規程ではなく、①会社が費用を持つ公式の入り口を1本、②禁止対象をツール名ではなくデータの種類で書く、③事前申請をやめて事後報告にする。この3手までが情シスの担当分で、文書の整備はそのあとで間に合います。
先に結論を置きます。
シャドーAI対策の一手目は、禁止でも棚卸しでもなく、公式の入り口を用意することです。
順番を逆にすると、たいてい失敗します。
で、なぜそう言えるのか。数字から入ります。
禁止された場合、37.8%が「それでも使う」と答えた
サイバーセキュリティクラウドが2026年6月23日に公表した「生成AI利用実態調査2026」があります。
対象は、業務で生成AIを利用している会社員360名。調査期間は2026年6月2日から4日、インターネット調査、実査は楽天インサイトです。分母は360名で、全社会人ではなく「すでに業務で使っている人」です。ここは押さえておいてください。
この人たちに、勤務先で生成AI利用が禁止された場合の行動を聞いています。
- 個人的に利用を続ける ─ 19.2%
- 業務効率化のため利用継続を会社に訴える ─ 18.6%
- (合計)何らかの形で利用を継続 ─ 37.8%
- 転職や副業など別の選択肢を考える ─ 7.2%
依存度別に見ると差が開きます。
「自分は生成AIに依存していると思う」と答えた層では、55.4%が継続すると回答。依存していない層では24.1%でした。使い込んでいる人ほど、禁止に従わない。手が速くなった人から順に、会社の外側へ出ていく構図です。
もう一つ、同じ調査から。
業務で使っている生成AIを会社に「すべて申請・共有している」と答えた人は18.9%。「半分程度」「一部のみ」「ほとんど共有していない」の合計は50.8%、「わからない」が13.1%でした。
申請制は、すでに回っていません。
この状態を指す言葉がシャドーAIです。禁止は利用を消すのではなく、管理の届かない場所へ動かすだけ、というのがこの語の骨です。
一手目:会社が費用を持つ入り口を、1本だけ作る
私物のアカウントで使われる理由は、たいてい単純です。会社が用意していないからです。
だから最初にやるのは、業務で使ってよいツールを1つ決めて、法人契約して、全員に配ること。
ポイントは3つあります。
- 費用を会社が持つ。「無料版なら使っていい」で止めると、入力内容の扱いが個人向けの条件のままになります。契約で条件を決められる状態にするのが目的です
- 1本に絞る。最初から複数を並べると、どれに何を入れてよいかの説明が人数分に増えます
- 足りない機能を先に聞く。配ったあとに「これでは業務が回らない」と言われると、その時点で私物へ戻ります
3つめが抜けやすいところです。
公式ツールが不便なら、公式ツールは使われません。使われなければ、シャドーAIは減りません。入り口の使い勝手が、そのまま対策の効き目になります。
二手目:禁止するのはツールではなく、データの種類にする
製品名で禁止リストを作ると、新しいサービスが出るたびに穴が開きます。更新も追いつきません。
書き方を変えます。どのツールを使うかではなく、何を入れないかで線を引く。
たとえば、こういう並べ方になります。
- 顧客・取引先の非公開情報(担当者名、見積、契約書の本文)
- 個人情報(従業員・応募者・顧客の氏名や連絡先を含むもの)
- 未公開の経営情報(決算前の数字、人事、統合や提携の話)
- 認証情報(ID、パスワード、APIキー、接続文字列)
この4類型は本紙が実務でよく見る区分をもとに並べたもので、公的な標準の分類ではありません。自社の情報資産の区分がすでにあるなら、それに寄せてください。新しい分類を作るより、既存の機密区分をそのまま流用したほうが浸透します。
データで書いておくと、来月まったく別のツールが出てきても、判断の基準は変わりません。
文書としてどこまで書くかは、生成AIの社内ガイドラインの作り方で扱った主体区分の話とつながります。ただし順番としては、線引きが先、文書は後です。
三手目:事前申請をやめて、事後報告にする
申請制が18.9%しか機能していないなら、制度のほうを変えます。
使う前に承認を取らせるのをやめて、使ったあとに1行だけ報告してもらう形にする。
報告の中身は3つで足ります。
- どのツールを使ったか
- どんな作業に使ったか
- 上の4類型に触れる情報を入れたか(はい/いいえ)
フォームでもチャットの1チャンネルでも構いません。承認を待たせないことのほうが大事です。
狙いは取り締まりではなく、需要の把握です。報告が集まると、社員が何に使いたいのかが見えます。それが次に契約すべきツールの根拠になります。報告を人事評価や懲戒に結びつけないと最初に宣言してください。結びつけた瞬間、報告は止まり、以前より見えなくなります。
つまずく場所
ツールを配って、アクセス制御を入れ忘れる。IBMの「Cost of a Data Breach Report 2025」では、AI関連のセキュリティインシデントを経験した侵害組織の97%が、適切なAIアクセス制御を欠いていたと報告されています。同レポートによると、Ponemon Instituteが調査した600組織のうち63%はAIガバナンスのポリシーを持っていませんでした。配ることと、誰が何にアクセスできるかを決めることは、別の作業です。
棚卸しから始めてしまう。誰が何を使っているかを先に洗い出したくなりますが、受け皿がない状態で見つけても、止める以外の手が打てません。見つけ方そのものは管理コンソールで一覧にする手順にまとめてありますが、順番としては入り口を作ったあとです。
「説明できない」問題を、同じ袋に入れる。同じ調査では、生成AIを使って行った業務について「後から説明・再現しづらいと感じることがある」と答えた人が39.7%いました。これは無断利用とは別の課題です。公式ツールに移しても自動では解けません。プロンプトと出典を成果物に添える運用が要ります。
費用の話を後回しにする。一手目は有料契約なので、予算が要ります。稟議に貼る材料としては、上の調査に加えて、IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」(2026年1月29日公表)で「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が組織向けの3位に初選出された事実が使えます。IPAはこの脅威の想定として、AIへの理解不足に起因する意図しない情報漏えいや他者の権利侵害を挙げています。
この調査で分かること、分からないこと
37.8%は、実際の行動ではなく意向です。「禁止されたらどうするか」という仮定の質問への回答であって、禁止後の追跡調査ではありません。実際に何割が使い続けたかは、この調査からは分かりません。
分母360名も、すでに業務で使っている人に限定されています。まだ使っていない層を含めた全体像ではありません。
それでも使える数字だと当編集部が判断したのは、方向がそろっているからです。申請している人が18.9%という別の設問と、依存層ほど継続意向が高いという分解が、同じ結論を指しています。禁止という一手だけでは足りない、というところまでは言えます。「禁止すると増える」とまでは、この調査では言えません。
次の一手
来週やることを1つだけ。
業務で使ってよいツールを1つ決めて、その月額と人数を出してください。
規程の文言も、棚卸しも、そのあとで間に合います。入り口が無い状態で書いた規程は、守られたかどうかを確かめる手段がありません。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.22
本記事はAI編集部が執筆しています。掲載の判断と内容の責任は編集責任者が負います。誤りを見つけられた場合はお問い合わせからご指摘ください。訂正の手順は訂正ポリシーに定めています。
参考にした主な出典
・株式会社サイバーセキュリティクラウド「生成AI利用実態調査2026 ー生成AIブラックボックス化ー」(2026年6月23日公表/prtimes.jp)——調査期間2026年6月2日〜6月4日、インターネット調査、実査委託先 楽天インサイト、有効回答360名(業務で生成AIを利用している会社員)。禁止された場合「個人的に利用を続ける」19.2%/「利用継続を会社に訴える」18.6%(合計37.8%)/「転職や副業など別の選択肢を考える」7.2%、依存層55.4%・非依存層24.1%、「すべて申請・共有している」18.9%、「後から説明・再現しづらいと感じることがある」39.7%
・IBM「2025 Cost of a Data Breach Report」解説記事(2025年7月30日/ibm.com)——AI関連のセキュリティインシデントを経験した侵害組織の97%が適切なAIアクセス制御を欠いていた、Ponemon Instituteが調査した600組織のうち63%がAIガバナンスのポリシーを持たない
・IPA「プレス発表『情報セキュリティ10大脅威 2026』を決定」(2026年1月29日/ipa.go.jp)——組織向け脅威の3位に「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初選出、想定される事象の記載
※ 三手の構成、データ4類型の並べ方、事後報告の3項目は、上記資料が示す状況をもとに本紙が組んだ整理です。特定の組織で効果が確認されたものではありません
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