AIが作ったものを仕事で使ってよいか。
判断は2つに分かれていて、先に見るのは学習ではなく出力です。
この記事の読者:情シス・DX担当(社内から「これ、著作権的に大丈夫ですか」と聞かれる位置にいる人)
先に答えを置きます。判断は2つの段階に分かれています。学習・開発の段階と、生成・利用の段階です。あなたが社内で聞かれているのは、ほぼ後者にあたります。
この分け方は本紙の思いつきではありません。文化庁のサイトで公開されている「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日・文化審議会 著作権分科会 法制度小委員会)が、段階を分けて整理しています。同じページには実務向けの解説資料として「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日・文化庁著作権課)も置かれています。2026年8月時点で、このページに並んでいるのはこの2本と、令和元年の権利制限規定の考え方、関係者ネットワークの総括、セミナー資料です。
段階を分けずに「著作権的に大丈夫か」とひとまとめで聞かれると、答えは出ません。学習の話と出力の話が同じ袋に入っているからです。分ければ、あなたが確認できることと、確認しても仕方のないことが、はっきり分かれます。
社内ルールの多くは、前半で止まっている
2023年から2024年にかけて社内ルールを作った組織は、たいてい「入力した情報が学習に使われるか」を確認しました。管理画面を開いて、学習に使わない側の設定にチェックを入れて、ルールに一行書いて終わり。
この作業は無駄ではありません。ただし、それは前半の段階の話です。文化庁の考え方では、AIの学習のために行われる著作物の複製等には、原則として著作権法第30条の4が適用され、権利者の許諾を要しないと整理されています。ここは主にモデルを開発する側の論点で、あなたの会社が既製のサービスを使っているだけなら、あなたが動かせる部分はほとんどありません。
注意が要るのは、この原則に例外が置かれていることです。「享受」の目的が併存している場合には、同条が適用されない場合があるとされています。挙げられている例が2つあり、そのうちの一つが実務に刺さります。RAG(検索拡張生成)等を実装する際に、生成AIへの入力用に既存の著作物を使用する場合です。
社内文書を読ませて答えさせる仕組みを作った組織は、ここで前半の当事者になります。「うちは使うだけ」から半歩はみ出す地点で、社内ガイドラインの作り方で書いた主体区分の話とちょうど同じ場所です。索引に何を入れたか、その出どころは何かを、記録しておく理由がここにあります。
業務で効くのは、生成と利用の段階
あなたが日々聞かれているのは、こちらです。作った資料を提案書に貼ってよいか。生成した画像を製品サイトに載せてよいか。文章をそのままメールで送ってよいか。
この段階の判断は、AIを使ったかどうかで特別扱いされません。人が描いた場合と同じ枠組みで、「類似性」と「依拠性」の2つを見ます。既存の著作物とよく似ていること、そしてその著作物に依拠して作られたこと。両方がそろって、はじめて侵害が問題になり得ます。
実務でありがたいのは、この2つが別々だという点です。似ているだけでは決まらない。依拠していても似ていなければ決まらない。だから確認する場所が2か所に分かれます。
類似性のほうは、目で確かめられる
出てきたものが、既存の作品と見分けがつかないほど似ていないか。ここは人間が見て確かめる作業です。特にキャラクター、ロゴ、既存作品の作風を名指しで指定して生成した場合は、似る確率が上がります。プロンプトに固有名詞を入れたときは、出力を必ず目で照合する。この一手間は、AIの側では代わりにやってくれません。
依拠性のほうは、記録で下げられる
依拠性については、文化庁の整理に実務で使える記述があります。AI利用者が「その著作物がAIの学習データに含まれていないこと」を示すことができれば、依拠性が認められる可能性を低減させる要素となる、というものです。
ここが、記録を残す意味です。あわせて、学習データの出所や、学習の過程・方法に関する意思決定について、事後的に確認・検証が可能な状態を確保しておくことが望ましいとされています。自社でモデルを作っていなくても、社内に置いた索引や参照させたファイルの一覧は、同じ性質の記録です。
逆に言えば、記録が何もない状態で「たまたま似ました」と説明するのは難しい。ここは今日から始められます。何を読ませたか、いつ入れたか、誰が承認したかの3列で足ります。
AIに作らせた資料は、自社のものになるのか
相談の半分は「侵害していないか」ですが、残り半分はこちらです。自社で作ったAI生成物に著作権が発生するのか。外に出したとき、真似されても文句が言えないのか。
この論点も「考え方について」で扱われています。AIそのものが著作者になるわけではなく、人間の関与の度合い、すなわち創作的な寄与があるかどうかで判断される、という整理です。短い指示を一度だけ出して、出てきたものをそのまま使った場合と、何度も出力を比べて選び、手を入れて仕上げた場合とでは、扱いが変わり得ます。
実務上の意味は一つです。権利を主張したい成果物ほど、人が手を入れた過程を残しておく。候補をいくつ出して、どれを選び、どこを直したか。制作フォルダにその履歴が残っていれば、それが説明になります。逆に、一発生成のまま外へ出した素材は、自社の資産として守れるとは限らないという前提で扱ったほうが安全です。
自社がどの立場かを、先に決める
チェックリスト&ガイダンスは、立場ごとに読む形になっています。AI開発者、AI提供者、AI利用者、そして業務外利用者(一般利用者)。構成は2部で、第1部が開発・提供・利用のチェックリスト、第2部が権利者のためのガイダンスです。
読む前に自社の立場を決めておくと、読む量が減ります。既製のサービスを契約して社員が使っているだけならAI利用者。社内向けにチャットを組んで配っているなら、提供者の側の記述も自分の欄になります。そして、自社にコンテンツ制作の部門があるなら、第2部の権利者側も自分の欄です。ひとつの会社が複数の立場を同時に持つのは、珍しいことではありません。
もう一つ、前提として知っておいたほうがよいことがあります。文化庁は、この考え方を取りまとめた理由として、生成AIと著作権の関係に関する判例および裁判例の蓄積がないという現状を挙げています。白黒がついた事例が積み上がっていない領域だ、ということです。だから資料は「考え方」であって、判定表ではありません。社内で使うときも、可否の一覧表に変換しないほうがいい。変換した瞬間に、書いていないことまで決めたことになります。
聞かれた側が、最初に確かめる一つ
「これ、著作権的に大丈夫ですか」と来たら、答える前に一つだけ聞き返してください。
「それは、外に出すものですか」。
社内の会議資料として使うのか、顧客に出すのか、公開するのか。ここで確認の深さが変わります。外に出るものだけ、固有名詞をプロンプトに入れていないか、出力が既存のものに似ていないか、何を読ませたかの記録があるかを見る。社内で完結するものまで同じ手順を踏むと、確認が回らなくなって、結局どちらも見なくなります。
そして、判断に迷うものは止めるのではなく、法務や顧問弁護士に渡す。情シスが引き受けるのは、渡すときに材料が揃っている状態を作るところまでです。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.16
本記事はAI編集部が執筆しています。掲載の判断と内容の責任は編集責任者が負います。誤りを見つけられた場合はお問い合わせからご指摘ください。訂正の手順は訂正ポリシーに定めています。
参考にした主な出典
・文化庁「AIと著作権について」(bunka.go.jp)——公開されている資料の一覧、「考え方について」を取りまとめた経緯、判例および裁判例の蓄積がないという現状の記載
・文化審議会 著作権分科会 法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)(bunka.go.jp)——学習段階における著作権法第30条の4の適用、享受目的が併存する場合の例(学習データの創作的表現を出力させることを目的とする場合/RAG等の実装で入力用に既存の著作物を使用する場合)、類似性・依拠性の2要件、依拠性に関する記載、記録の保存・文書化
・文化庁著作権課「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日)(bunka.go.jp)——AI開発者/AI提供者/AI利用者/業務外利用者(一般利用者)の立場ごとの構成、第1部チェックリストと第2部権利者のためのガイダンスの2部構成
※ AI生成物の著作物性と創作的寄与に関する記述、および実務上の確認の順番(外に出すかどうかで深さを変える、固有名詞を入れたときの目視照合、読ませたものの3列の記録)は、上記資料で示された考え方をもとに本紙が組んだ整理です。特定の事案についての判断を示すものではありません
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