想定問答は、ひとりで埋めるほど
「反論役」の視点が消える。
この記事の読者:経営・管理職/全社員・非専門(稟議書・企画書・提案書を出す前に想定問答を作る人)/個人向け(提出前に一度だけ見直したい人)/情シス・DX担当(ツール導入の稟議を通す側の人)。専門知識は要りません、AIチャットに貼って役を1つずつ頼むだけです。
要点:稟議や提案の想定問答を一人で作ると、自分がすでに答えを持っている質問しか並びません。生成AIに「経営・財務目線」「現場・運用目線」「あら探し役」の3つの役を、1つずつ順番に演じさせると、ひとりでは出てこなかった質問が増えます。一括で「3つの視点で聞いて」と頼むと質問の切り口が似てしまう、という詰まりどころと、答えられない質問を隠さず書く手順、実例と組み合わせの応用まで書きます。
稟議書を出す前の晩、想定問答を一人で埋めていた。
「コストは」「なぜ今か」「他社はどうしているか」。
思いつく質問を並べて、自分で答えを書く。
よくある準備だ。で、今日はここに生成AIを1つ足す話をする。
一人で書く想定問答は、どうしても自分に甘い
一人で想定問答を作ると、起きることがある。
自分がすでに答えを持っている質問しか、思いつかない。
都合のいい想定問答になる。
決裁の場で初めて飛んでくるのは、たいてい「その数字の前提は」「失敗したらどうするのか」みたいな、あら探し系の質問だ。
この「あとから気づく」を先に起こす手法が、意思決定の研究にはある。
経営コンサルタントのゲイリー・クラインが2007年、Harvard Business Reviewで紹介した「プロジェクトのプレモータム」。プロジェクトが「すでに失敗した」と仮定して、理由を先に全員で書き出すやり方だ。
土台にあるのは、ミッチェル・ルッソ・ペニントンの1989年の実験。「まだ起きていないこと」として理由を考えるより、「すでに起きたことにして」理由を考えるほうが、人はより具体的な理由を多く挙げられた、という結果だった。
想定問答も同じ構造でやれば、自分の死角を埋められるはずだ。問題は、死角のある本人が一人でやっても、死角のある質問しか思いつかないこと。ここでAIに役を預ける。
AIに役を預ける。渡し方はこう
手順はこう。番号の順に進める。
- ①本文を渡す。稟議書・提案書の本文をそのままAIチャットに貼る。長ければ結論と背景だけでもいい。
- ②役を1つずつ指定する。「経営・財務目線で、この提案に質問して」とまず1つだけ頼む。出てきた質問を見てから、次に「現場・運用目線で」、最後に「あら探し役で、いちばん弱い論点を突いて」と続ける。
- ③仕分ける。出てきた質問を「即答できる」「調べれば答えられる」「答えられない」の3つに分ける。
- ④答えられない問いは、隠さず書く。想定問答の欄に「検討中」「未確認」とそのまま書く。決裁者に聞かれる前に、自分で先に書いておく。
- ⑤出し直す前に、もう一度同じ3役に通す。前回と同じ質問は無視して、新しく出た質問だけを見る。
使い方の実例、ひとつ
たとえば「チーム用にAIチャットの有償プランを導入したい」という稟議だとする。
経営・財務目線だと、「月額◯円×人数、年間でいくらか」「使わない人が出たら無駄にならないか」。
現場・運用目線だと、「導入後、誰が使い方を教えるのか」「既存のツールとどちらを使うか迷ったとき、誰が決めるのか」。
あら探し役だと、「無料プランや既存の契約で足りない理由は」「1年後にやめる基準は決まっているか」。
この最後の質問、一人で想定問答を作っていたときは出てこなかった。
組み合わせの応用、ひとつ
1つのAIに役を切り替えさせる代わりに、役ごとに別のAIを割り当てる手もある。
経営・財務目線はChatGPTに、あら探し役はClaudeに、というように分ける。
同じAIで役を切り替えると、直前の役の答え方を引きずることがある。別のAIに分けると、視点が混ざりにくい。
詰まる場所
一括で「3つの視点で聞いて」と頼むと、質問の切り口が似てしまって、思ったほど広がらなかった。ここは詰まった。役は1つずつ、順番に渡したほうがいい。
役の説明が曖昧だと、「財務目線」のつもりで聞いても、ただの手続き論になりがちだった。「何にいくら使うか」より、「来期予算のどの枠を削って充てるのか」まで指定すると、質問が具体的になった。
AIが出す質問も、業種や社内事情を知らないぶん、的外れなことがある。出た質問をそのまま使わず、自分の文脈に合うかを一度人が選ぶ。ここは機械任せにできない。
次に出す資料で、まず3つの役を決める
今日からできることは一つ。
次に資料を出すとき、想定問答を一人で埋める前に、上の3つの役をAIに渡す。経営・財務目線、現場・運用目線、あら探し役。この順でいい。
答えられない質問が出たら、消さずに「検討中」と書く。それが、決裁の場で一番効く一行になる。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.10.14
本記事は、編集責任者の指示のもとAI編集部が執筆し、編集責任者が内容を確認しています。掲載の判断と内容の責任は編集責任者が負います。誤りを見つけられた場合はお問い合わせからご指摘ください。訂正の手順は訂正ポリシーに定めています。
参考出典
・Gary Klein「Performing a Project Premortem」Harvard Business Review, Vol.85 No.9, pp.18-19(hbr.org、2007年9月号・2026年10月14日時点でタイトル・号数・要旨を複数の二次資料で確認。本文は有料のため当方は確認していない)——プロジェクトが「すでに失敗した」と仮定して理由を先に書き出す「プレモータム」の出典
・D. J. Mitchell, J. E. Russo, N. Pennington「Back to the Future: Temporal Perspective in the Explanation of Events」Journal of Behavioral Decision Making, Vol.2 No.1, pp.25-38(1989年)——「すでに起きたとして理由を考える」ほうが「まだ起きていないこととして考える」より具体的な理由を多く挙げられた、とする実験(プロスペクティブ・ヒンドサイト)の出典。Kleinのプレモータム提案の土台
・Wikipedia(英語版)「Pre-mortem」(en.wikipedia.org、2026年10月14日閲覧)——上記2件の要旨の確認に使用
※ 稟議・提案の想定問答は日本企業で広く行われている慣行として扱い、特定の統計は引いていない。役割分担の手順・使い方の実例・組み合わせの応用は、本紙が構成した一般例であり、特定の製品の公式な使い方ではない
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