総務省58.8%、帝国データバンク34.5%、PwC87%
3つとも本当です。使い分けの基準は2つ、1つめは個人を数えたか企業を数えたか。
この記事の読者:情シス・DX担当/経営・管理職(社内資料や稟議に「日本のAI利用率」を1行入れようとして、検索したら数字が3つ出てきた人)
要点:日本の生成AI利用率として流通している34.5%・58.8%・87%は、どれも本当の数字です。違うのは数えた相手で、順に「全国の企業1万312社」「個人15〜69歳」「売上500億円以上の企業の課長職以上932名」。稟議には34.5%、経営会議には87%、社外向けには58.8%が向きます。ただし58.8%は2025年度から調査対象に15〜19歳(利用率91.7%)が加わっており、前年比較は基準が変わっています。
先に答えを言います。
3つとも本当の数字です。
間違いが起きるとしたら、数字ではなく引き方です。
基準は2つあります。
1つめは、個人を数えたか、企業を数えたか。
2つめは、その企業の、誰に聞いたか。
この2つで、34.5%と87%の差はほぼ説明がつきます。
本紙は7月28日に、企業向けの数字のばらつきを検算しました(日本のAI活用率は87%か、12%か)。
あの回のあと、7月に令和8年版の白書が公表され、個人の数字が更新されています。
今日はそこに最新の企業調査を並べ直して、どれをどこに置くかまで決めます。所要は5分です。
まず、3つを並べます
同じ2026年の前半に出た調査です。
並べると、数えている相手がぜんぶ違います。
| 数字 | 出したところ | 数えた相手 | 回答数 | 聞き方 |
|---|---|---|---|---|
| 34.5% | 帝国データバンク (2026年3月17〜31日) | 全国の企業(規模を問わない) | 1万312社 (対象2万3,349社・回答率44.2%) | 生成AIを「非常に活用している」4.4%+「やや活用している」30.2% |
| 58.8% | 総務省 令和8年版 情報通信白書 (2026年7月公表) | 個人(15〜69歳) | 白書本文に記載なし | 業務や日常生活で生成AIサービスを一つでも使ったことがあるか |
| 87% | PwC Japanグループ (2026年2月12〜19日) | 売上高500億円以上の企業の、課長職以上で生成AI導入に関与している人 | 日本932名 | 生成AIの活用・推進度 |
ここまでで、だいたい見えたと思います。
34.5%は「日本の会社ぜんぶ」に近い母集団です。
87%は「大企業の、AIを進めている部署の管理職」です。
58.8%は会社の話ですらなく、個人が仕事や暮らしで一度でも使ったか、です。
どれを、どこに引くか
用途で決められます。3つです。
- 社内の稟議・予算取り → 34.5%(帝国データバンク)。「うちだけ遅れている」の反対を言える数字です。全国の企業でも3社に1社。規模別も出ているので、自社と近い列を引けます(大企業46.5%/中小32.4%/小規模28.0%)
- 経営会議・役員向け → 87%(PwC)。ただし必ず「売上500億円以上・課長職以上・932名」まで書いてください。ここを落とすと、実態より進んで見えます
- 社外向け資料・採用広報・研修の導入 → 58.8%(総務省)。個人の話なので、読み手が自分ごとにできます。官公庁の一次情報なので、出典としても強いです
逆にやめたほうがいいのは、3つを同じグラフに並べることです。
軸が違うので、伸びているようにも落ちているようにも作れてしまいます。
前年と比べるときだけ、注意が要ります
白書の58.8%は、前年の26.7%からほぼ倍です。
ここに1つ、見落としやすい変更があります。
2025年度の調査から、対象年齢が変わりました。白書の注記はこうです。「2023年度及び2024年度個人向け調査では、調査対象の年齢を20歳以上としていたが、今回の2025年度個人向け調査では、新たに15歳~19歳を調査対象に加えている」。
この年代の利用率が、いちばん高いのです。
15〜19歳が91.7%。20代78.2%、30代56.3%、40代49.0%、50代44.2%、60代33.5%。
では、それで倍になったのか。
本紙で試算しました。人口推計(2025年6月1日現在の概算値)では15〜19歳が547万人、15〜69歳が約8,075万人で、比率は6.8%です。回答者がこの人口構成どおりに割り付けられていたと仮定すると、15〜19歳を除いた20〜69歳の利用率は約56.4%。拡大の寄与は2.4ポイントほどになります。年代6区分に均等に割り付けられていたと仮定しても、約52.2%(寄与6.6ポイント)です。
つまり、26.7%から58.8%への32.1ポイントは、対象年齢の変更では説明できません。実際に増えたと読むのが自然です。
ただし各国の回答者数と年代の割付は、白書の本文には書かれていませんでした(本紙が確認した範囲)。上の試算はあくまで仮定を置いた計算です。前年比較を資料に載せるなら、「対象年齢が変わった年をまたいでいる」の1行は添えてください。
国際比較を引くときの落とし穴
白書には各国の数字も載っています。日本58.8%に対して、米国75.6%、ドイツ75.6%、中国93.6%。
この設問は「一つでも使ったことがあるか」です。
使い続けているか、業務で使えているかは、この数字からは分かりません。
ちなみにテキスト生成AIに限ると、日本55.0%、米国65.4%、ドイツ66.0%、中国88.3%です。差は少し縮みます。
持ち帰りは1つだけです
数字を書くときは、同じ行に「誰の何%か」を入れる。これだけで大丈夫です。
「日本のAI利用率は87%」ではなく、「売上500億円以上の企業の課長職以上では87%」。
6文字増えるだけで、その資料は突っ込まれなくなります。
参考にした主な出典
・総務省「令和8年版 情報通信白書」第1章 個人におけるAI利用(soumu.go.jp、2026年7月公表・2026年8月21日確認)——個人の生成AI利用経験率 日本58.8%(2025年度)/26.7%(2024年度)/9.1%(2023年度)、米国75.6%・ドイツ75.6%・中国93.6%、テキスト生成AI限定 日本55.0%・米国65.4%・ドイツ66.0%・中国88.3%、年代別(15〜19歳91.7%/20代78.2%/30代56.3%/40代49.0%/50代44.2%/60代33.5%)、設問文、調査対象年齢の変更に関する注記
・帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」(tdb.co.jp、2026年8月21日確認)——活用している34.5%(非常に4.4%+やや30.2%)、調査期間2026年3月17〜31日、有効回答1万312社(対象2万3,349社・回答率44.2%)、大企業46.5%・中小32.4%・小規模28.0%
・PwC Japanグループ「生成AIに関する実態調査2026 春」(pwc.com/jp、2026年8月21日確認)——日本の活用・推進度87%(前回比11ポイント上昇)、調査時期2026年2月12〜19日、日本932名、対象は売上高500億円以上・課長職以上で生成AI導入に関与している人
・総務省統計局「人口推計(2025年6月1日現在・概算値)」(stat.go.jp、2026年8月21日確認)——15〜19歳547万人、15〜64歳7,355万人、65〜69歳720万人
※ 20〜69歳の利用率(約56.4%・約52.2%)は、公表値と人口推計から本紙が仮定を置いて計算した試算です。調査の割付が公表されていないため、確定値ではありません。各調査の数値は確認日時点のものです。
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編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.21
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