外部委託よりも、自社のAIに作らせたほうが安く、速かった。
大阪ガスの「最大7割」を、比較条件ごと読み解く。
この記事の読者:経営・管理職/情シス・DX担当(他社のAI活用の数字を稟議や社内検討の材料にしたいが、その数字がどこまで硬いか確かめたい人)
要点:大阪ガスは自社構築のAI駆動開発基盤「WAAAP」で、外部委託による従来型のシステム開発と比べて期間を最大約6割、費用を最大約7割削減したと公表しました。ただし原典の数字はいずれも「最大で」であり平均値ではなく、比較した案件数・規模・期間は非開示です。数字の出し方と、自社に置き換えるなら何から測るかを整理します。
外部に出していた開発を、自社のAIに作らせるようにしたら、期間も費用も減った。大阪ガスが2026年6月15日に公表した資料によれば、自社構築のAI駆動開発基盤「WAAAP(Whole AI Agentic Automated Platform)」を使うと、外部委託による従来型のシステム開発と比較して、開発プロセス全体の期間を最大で約6割、費用を最大で約7割削減することを実現したという。ただし、この「最大で」が何件の比較から出てきた数字なのかは、同じ文中には書かれていない。
公表された数字を、そのまま置く
プレスリリースの該当箇所を、原典の言い回しのまま引く。「この結果、外部委託による従来型の開発手法と比較して、開発プロセス全体の期間を最大で約6割、費用を最大で約7割削減することを実現しました」。対象はシステムの企画・要件整理から実装、テスト、リリース、運用までの全工程で、AI駆動開発基盤WAAAPがこれを一気通貫で支援しているという。
もう一つ、数値の出ていない成果も同じ資料に書かれている。「本基盤で開発したシステムのテスト工程では、外部委託で開発した他のシステムと比較して、不具合の修正にかかる時間を大幅に短縮しています」。こちらは「大幅に」とだけあり、割合も時間数も公表されていない。当方はこの一文を、6割・7割という数字と同じ扱いにはしない。
何を、何と比べたか
比較対象は「外部委託による従来型の開発手法」であり、母数は原典の中に出てこない。プレスリリースが言及する具体的な適用例は2つで、ひとつは大阪ガスが提供する遠隔AIエネルギーマネジメントシステム「EnergyBrain」の開発、もうひとつは食品・樹脂などの製造工程で水分量などを推定する成分推定AIの開発である。この2件が6割・7割の算出根拠に含まれるのか、それとも別に社内で集計した案件群があるのかは、公表文からは判別できない。
時期の情報はある。基盤の稼働範囲は「現在Daigasグループ内での活用を推進しており」とあり、本稿執筆時点(2026年8月29日)ではグループ外への展開は「今後検討」の段階。つまり6割・7割という数字は、社外企業への外販を前提にした実績ではなく、社内利用の範囲で得られたものである。基盤の構築にはGoogle CloudのTAM(テクニカルアカウントマネジメント)サービスの技術支援を受け、AI支援機能の一部にGemini Enterpriseを使っている。
「最大で」に隠れているもの
読めなかったことを列挙する。比較した案件の件数。案件ごとの規模(開発規模・関わった人数)。比較に使った「従来型の外部委託開発」がどの過去プロジェクトを指すか。そして「最大で」である以上、6割・7割に届かなかった案件が他に存在するはずだが、その分布や中央値は書かれていない。「最大で」は上限を示す言葉であり、平均や典型値を示す言葉ではない。この違いを取り違えると、稟議で「うちも7割減る」と読まれてしまう。
もう一点、WAAAPは開発を止めるための仕組みも内蔵している。プログラムの変更を継続的にテスト・検証して本番へ反映するCI/CDの仕組みを組み込む一方で、各工程の間に「品質基準を満たさなければ先に進めない」品質ゲートを設けているという。速度を稼ぐ仕組みと、速度を止める仕組みを両方持たせた上での6割・7割減であり、テストや検査の工程を丸ごと省いた結果ではない、という説明である。この説明が正しいかどうかを当方は独自に検証していない。
自社に置き換えるなら、何から測るか
持ち帰りは一つ。「最大で何割減った」という発表を稟議に引用する前に、比較対象になった案件の件数と規模を、自社の状況に合わせて先に決めておくことである。大阪ガスの事例で言えば、比較したのが1件のパイロット案件なのか、複数案件の平均なのかで、この数字の重みはまったく変わる。自社でAI駆動開発を試すときも同じで、最初から「前工程と比べて何を、何件、どの期間で測るか」を決めてから走らせたほうが、後から出てくる数字を疑わずに済む。テスト・レビュー・セキュリティ確認の工程を人が引き続き担うのか、AIの監視に委ねる範囲をどこまで広げるのかも、比較の前提として先に固めておく事柄である。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.29
本記事はAI編集部が執筆しています。掲載の判断と内容の責任は編集責任者が負います。誤りを見つけられた場合はお問い合わせからご指摘ください。訂正の手順は訂正ポリシーに定めています。
参考にした主な出典
・大阪ガス プレスリリース「システム開発を内製化するAI駆動開発基盤『WAAAP』を構築-企画から運用までを一気通貫で効率化-」(osakagas.co.jp、2026年6月15日発表・2026年8月29日閲覧)——「この結果、外部委託による従来型の開発手法と比較して、開発プロセス全体の期間を最大で約6割、費用を最大で約7割削減することを実現しました」「本基盤で開発したシステムのテスト工程では、外部委託で開発した他のシステムと比較して、不具合の修正にかかる時間を大幅に短縮しています」「なお、WAAAPは現在Daigasグループ内での活用を推進しており(中略)将来的には外部への展開も検討してまいります」
※ 比較件数・規模・期間・「大幅に短縮」の具体数値は原典に記載がなく、当方は推定・換算を行っていません。数字の分類・整理は本紙による読み解きであり、原典の一部でも大阪ガス公式の見解でもありません。
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