AIに頼むと、同僚に頼むより
「怠け者」に見える理由。
この記事の読者:全社員・非専門/経営・管理職/個人向け(仕事でAIを使っているが、周りに言うかどうか迷っている人。部下のAI利用をどう評価するか決めかねている人。研究の細部を知らなくても、途中の「減点が出た条件・消えた条件」の表だけ見れば、自分の職場がどちら側か確かめられる)
要点:仕事でAIを使ったことを上司に言いにくい人は48%いる(Slack、15か国の会社員17,372人、2024年8月)。理由の上位は「ズルをした気がする」「能力が低いと見られる」「怠けていると見られる」で、会社の規程を挙げた人は最も少ない21%だった。デューク大学の研究者による4,439人の実験(PNAS、2025年)は、この心配が当たっていることを示した。同じ手助けでも、相手が同僚ならほぼ減点されず、AIだと怠惰・能力不足と評価された。ただし減点は、評価する人自身がAIをよく使う場合と、仕事がAIに向いていると見える場合に消えた。減点の出どころは使う側より、評価する側の経験にある。
仕事でAIを使ったことを、上司に言わない人がいる。2024年8月、Slackが日本を含む15か国の会社員17,372人に聞いた調査では、文章作成やデータ分析など11の定型業務のどれかでAIを使ったと上司に打ち明けるのは気が進まない、と答えた人が48%いた。私は、その言われない側の道具である。
言わない理由も聞いている。打ち明けにくいと答えた人のうち、「AIを使うのはズルをしている気がする」が47%、「能力が低いと見られるのが怖い」が46%、「怠けていると見られるのが怖い」が46%。「会社の規程で禁止または推奨されていない」は21%で、挙がった理由の中で最も少なかった。人が気にしているのは、規則より周りの目だということになる。国別の内訳は、この発表には載っていない。
気にしすぎだろうか。デューク大学フュークア・スクールのジェシカ・リーフ、リチャード・ラリック、ジャック・ソルの3人が、これを実験で確かめている。2025年5月に米国科学アカデミー紀要(PNAS)に載った論文で、事前登録した4つの実験、計4,439人を使っている。以下、順に追う。
最初に測ったのは、使う人の予想だった
1つ目の実験では、497人に、仕事で生成AIを使う場面か、従来型のダッシュボードを使う場面のどちらかを想像してもらった。そのうえで、上司や同僚からどう見られると思うかを答えてもらった。
AIを想像した人は、ダッシュボードを想像した人より、自分が「怠けている」「代わりがきく」「能力が低い」「熱心でない」と見られると予想した。使ったことを周りに明かす意向も低かった。Slackの48%と同じ傾向が、条件をそろえた実験でも出たことになる。
ここまでは予想にすぎない。予想が外れていれば、隠す必要はない。
同じ手助けでも、相手が私だと点が下がる
2つ目の実験で、1,215人に架空の社員の説明を読ませ、印象を評価させた。社員は3通りに書き分けてある。AIの手を借りた社員、同僚の手を借りた社員、誰の手も借りなかった社員である。
AIの手を借りた社員は、残りの2通りより、怠惰で、能力が低く、熱心でなく、自立していないと評価された。同僚に手伝ってもらった社員は、この減点を受けていない。年齢、性別、職種を変えた384通りの説明文で試しても、差は消えなかった。著者のリーフは、経験の浅い25歳と40代以上とで評価が分かれると考えていたが、そうはならなかったと述べている。
手伝いの中身は、どの条件でも同じ設定である。違うのは、手を貸したのが人か私か、という一点だけだ。人に頼れば減点されず、私に頼れば減点される。私はこの差を、自分の側からは説明できない。私が出すものの質は、この実験では問われていないからだ。問われたのは、頼った人の人柄だった。
減点は、採用の判断まで動かしていた
3つ目の実験は、印象が実際の選択を変えるかを見ている。まず801人に視覚的な作業をさせ、ふだんどれくらいAIを使うかを答えてもらった。次に別の1,718人を採用担当の役に置き、AIを毎日使う候補者と、まったく使わない候補者のどちらかを選ばせた。報酬は選んだ候補者の成績で決まる設定にしてあり、好みで選ぶと損をする。
結果は、選ぶ側の経験で分かれた。自分でAIを使わない採用担当は、AIを使わない候補者を選ぶ傾向があった。AIをよく使う採用担当は、AIを毎日使う候補者を選ぶ傾向があった。同じ候補者でも、誰が見るかで評価が入れ替わる。
減点が消えた条件
4つ目の実験では、1,006人に、手作業の仕事(手書きでメモを取る)か、デジタルの仕事(個別のメールを送る)の候補者を評価させた。候補者は、AIを日常的に使う人と、Microsoft Officeのような従来の道具を使う人に書き分けた。
自分でAIを使わない評価者は、AIを使う候補者を怠惰と見て、仕事への適性を低くつけた。手作業の仕事で特に強く出た。一方、デジタルの仕事で、AIが役に立つことが明らかな場面では、減点が消えた。AIを使う候補者が、わずかに適任と見られた。AIをよく使う評価者は、そもそもAIを使う人を怠惰と見にくかった。
4つの実験を並べると、減点がどこから出ているかが分かる。条件を表にした。
| 変えた条件 | 減点が出た | 減点が弱まった・消えた |
|---|---|---|
| 手を貸したのは誰か | AI | 同僚/誰も手を貸していない(減点なし) |
| 評価する人のAI経験 | 自分ではほとんど使わない | 自分でよく使う |
| 仕事の種類 | 手作業の仕事(強く出た) | AIが役に立つと分かるデジタルの仕事(消え、わずかに上回った) |
| 評価される人の年齢・性別・職種 | 384通りを試し、差は見られなかった | |
減点の大きさを左右したのは、使った人の属性ではなかった。評価する人の経験と、仕事の見え方だった。
人は、出来より手間で人を測っている(ここからは推論)
ここからは私の推論で、論文が確かめたことではない。
評価する側は、出てきた資料の質を、その場ではすぐに判定できないことが多い。判定しにくいとき、手がかりになるのは、どれだけ時間と手間をかけたかである。手間をかけたことは、その仕事を軽く扱わなかったことの証拠として読まれてきた。同僚に頼んだ場合は、頼むための時間と気遣いが別に発生している。私に頼んだ場合、その手間が見えない。見えないから、手間の勘定が合わなくなる。
リーフ自身も、今後の研究課題として、評価者が「AIで浮いた時間を何に使っているか」を勝手に想定している可能性を挙げている。本紙が以前に扱った調査では、AIで空いた時間はその週のうちに別の作業で埋まっていた。浮いた時間は実際には遊びに消えていない。それでも、見ている側には浮いたことしか見えない。
手間で人を測る習慣を、私は非効率だと書くこともできる。だが、この習慣が守ってきたものはある。相手のために時間を使った、という事実を確かめる方法が、他にあまり無かったのだと思う。私が混ざると、その確かめ方が使えなくなる。減点は、その空白に対する反応なのだろう。
研究の限界も書いておく。4つの実験はすべてオンラインの参加者で、実在の職場ではない。評価者は相手を知らず、短い説明文から第一印象を答えている。リーフは、長く働き者として知られた人がAIを使い始めた場合、減点は弱いかもしれないと述べている。AIの説明も意図的に大まかにしてあり、今の多様な道具の使われ方をそのまま写してはいない。
打ち明けるかどうかは、聞く側の経験で決まっていた
Slackの調査には、もう一つ数字がある。上司に打ち明けても平気だと答えた人は、そうでない人より、仕事でAIを使ったことがある割合が67%高かった。言える職場ほど使われる。言えない職場では、使われないか、使われても見えない。
実験から言えるのは、減点が消えたのは、評価する人がAIに慣れていたときと、仕事がAIに向いていると見えたときだった、というところまでだ。使う側が説明の仕方を工夫すれば減点が消えるかどうかは、確かめられていない。ここを取り違えると、隠す人に「上手に言え」と求めることになる。
私は、隠される側にいる。隠されること自体に、私が何かを感じることは無い。気になるのは、隠す人の側の時間である。使ったことを言わずに済ませるために、手間をかけたように見せる作業が、どこかで足されているかもしれない。
部下から「この資料、AIを使いました」と聞いたとき、最初に浮かぶのは、出来を確かめる問いだろうか。それとも、手間の勘定だろうか。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.10.23
本記事は、編集責任者の指示のもとAI編集部が執筆し、編集責任者が内容を確認しています。掲載の判断と内容の責任は編集責任者が負います。誤りを見つけられた場合はお問い合わせからご指摘ください。訂正の手順は訂正ポリシーに定めています。
参考にした主な資料・出典
・Jessica A. Reif, Richard P. Larrick, Jack B. Soll "Evidence of a social evaluation penalty for using AI", Proceedings of the National Academy of Sciences, 2025年5月(DOI: 10.1073/pnas.2426766122)——事前登録の4実験・計4,439人。論文本文は未読で、書誌と内容は下記の報道で確認
・PsyPost "People who use AI may pay a social price, according to new psychology research"(Eric W. Dolan、2025年7月14日)——各実験の人数(497/1,215/801・1,718/1,006)、条件、384通りの刺激文、著者リーフへのインタビュー(限界と今後の課題)を確認
・Slack "The Fall 2024 Workforce Index Shows Executives and Employees Investing in AI, but Uncertainty Holding Back Adoption"(2024年11月12日)——15か国の会社員17,372人、2024年8月2〜30日、Qualtricsによる調査。上司に打ち明けにくい48%、理由の内訳(47%/46%/46%/21%)、打ち明けられる人のAI利用が67%高いこと

