アンケートの自由記述をAIに集計させると、少数意見は「その他」へ流れる。
先に固定するのは、カテゴリの名前ではなく残し方だ。
この記事の読者:情シス・DX担当(社内アンケートや顧客アンケートの自由記述をAIに集計・分類させている、またはこれから任せようとしている人)/経営・管理職(AIが出した意見の集計結果を、そのまま人事や改善策の判断材料に使う人)
要点:アンケートの自由記述をAIにいきなり全件渡して分類させると、件数の少ない意見ほど「その他」へ流れ込みやすくなります。防ぐ手順は5つ。まず回答の1〜2割でカテゴリの仮案をAIに作らせ、人がカテゴリ名と定義を固定してから、その表を渡して全件を処理させます。件数が少ないカテゴリをそのまま残す基準も、最初に決めておきます。
アンケートの自由記述を、AIに集計させたことはありますか。
顧客満足度調査でも、社内の従業員アンケートでも、渡してしまえば数分でカテゴリ別の件数表が返ってきます。
ただ、その表の「その他」の件数が、思っていたより多いことがあります。
原因は、AIの能力ではなく、頼む順番
「この300件を、内容ごとに分類してください」と一度に頼むと、AIはカテゴリを作る作業と、回答を仕分ける作業を同時にやります。
多数派の意見に共通する言葉を先に拾い、そこにきれいに収まらない少数の意見は、まとめて「その他」に流れ込みやすくなります。
この作業自体は、生成AI以前からある「アフターコーディング」という手法です。自由記述の回答に、あとからカテゴリの符号を割り振っていく仕事で、人手でも長く行われてきました。
三菱総合研究所は2024年8月5日、生成AIを使って自由記述式アンケート1,000件規模を自動分析すると、手動作業の10分の1以下の時間で終わったと発表しています。速さそのものは本物です。ただ、速いということは、カテゴリの決め方を1回誤ると、その誤りごと全件へ複製されるということでもあります。
手順は5つ。カテゴリを固定してから、全件を流す
使うAIツールは問いません。順番だけ守ります。
- いきなり全件を投げない。まず1〜2割をランダムに抜く。300件なら、50〜60件ほど。この段階では分類そのものより「どんなカテゴリになりそうか」を見るのが目的です。
- 抜いた分だけをAIに読ませ、カテゴリの仮案を出させる。「内容ごとに分類してください」ではなく、「共通するテーマを、名前と定義つきで挙げてください」と頼みます。全件の縮図だと思って読んでいい範囲です。
- 仮案を人が固定する。似た意味のカテゴリはまとめ、粒度がバラバラなものは揃えます。ここで名前と定義を確定させ、以降は変えません。
- 確定したカテゴリの表を渡し、全件を通しで再分類させる。「このカテゴリ表に沿って、全件を割り振ってください。当てはまらないものは無理に既存カテゴリへ入れず、新しいカテゴリとして残してください」と一文添えます。
- 件数が少ないカテゴリを、自動で「その他」へまとめさせない。目安として、全体の1%に満たないカテゴリでも、件数と代表的な回答を1つ添えてそのまま残すよう指示します。
| 順番を誤ると | 何が起きるか |
|---|---|
| カテゴリ作りと仕分けを同時に頼む | 先に読んだ回答の傾向にカテゴリが引っ張られる |
| 少数意見を多数派の軸で仕分ける | どのカテゴリにも完全には一致せず「その他」へ集まる |
| 件数の少なさで自動的にまとめる | 件数は少ないが緊急度の高い意見が埋もれる |
詰まる場所
表記ゆれ(「対応が遅い」と「返信までが長い」のように、言い方は違うが同じ不満)は、仮案の段階で人が統合しておかないと、確定後もカテゴリが割れたままになります。
皮肉や二重否定を含む回答(「悪くはないが良くもない」など)は、ポジティブ・ネガティブの符号づけでAIがつまずきやすい箇所です。抜き打ちで人が数件、原文と分類結果を照合する工程を、5つの手順のどこかに必ず入れます。この照合をどのくらいの頻度でやれば十分かは、回答の内容や量によって変わるはずですが、そこまでは確かめられなかった。
自由記述に個人が特定できる内容(氏名・部署名・担当者名)が混ざっていることもあります。AIに渡してよい入力かどうかは、社内の基準で先に確認しておく必要があります。
そしてもう一つ。集計表の件数だけを見て、そのまま人事評価や重要な改善策の判断材料にしないことです。少数でも緊急度の高い意見は、件数ではなく中身で扱いを決めます。
件数より先に、残し方を決めておく
アンケートの自由記述をAIに集計させる依頼の最後には、「件数が少ないカテゴリほど、そのまま残してください」と一文を足してください。
この一文があるかどうかで、集計表の「その他」に、本当は聞くべきだった声が混ざるかどうかが変わります。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.09.24
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参考出典
・三菱総合研究所「生成AIで自由記述式アンケートを自動分析、手動の1/10の時短を実現」(2024年8月5日発表/確認日2026年9月24日)https://www.mri.co.jp/news/press/20240805.html
・日経クロステック「三菱総研が生成AIで自由記述式アンケートを分析、作業時間が10分の1以下に」(確認日2026年9月24日)https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/24/01335/
※ 本稿の5手順(仮分類→カテゴリ固定→全件処理→少数意見を残す→抜き打ち照合)は、上記発表および複数の実務解説記事が示す一般的な進め方を参考に、本紙が業務手順として構成したものであり、特定企業・製品の公式手順ではありません

