生成AI利用86.4%、米国との差は4.5ポイント。
埋まらない列が3つある。
数字を三つ置きます。86.4%、90.9%、4.5ポイント。
順に、自社の何らかの業務で生成AIを利用していると答えた日本の割合、同じ設問での米国の割合、その差です。総務省が2026年7月に公表した令和8年版情報通信白書、その企業向け4か国アンケートの結果です。
前年の数字も並べます。2024年度調査での日本は55.2%でした。1年で31.2ポイント上がっています。
ここから言えることは、はっきりしています。「日本企業は生成AIを使っていない」という前提は、この設問に関してはもう成り立ちません。
ただし、同じ調査のなかに、差がまったく縮まっていない列が三つあります。うち一つは、利用率の差の7倍以上です。
まず、並んだところを確認します
利用率の4か国比較はこうなっています。日本86.4%、米国90.9%、ドイツ91.6%、中国98.1%(回答者数はそれぞれ477/308/308/308)。2024年度調査での日本は55.2%、米国90.6%、ドイツ90.3%、中国95.8%でしたから、この1年で動いたのは日本だけです。他の3か国はほぼ横ばいで、上に張り付いています。
方針の側も上がりました。所属企業の生成AI活用方針について「積極的に活用する方針」「活用する領域を限定して利用する方針」と答えた合計は、日本で68.9%。2024年度の49.7%から19.2ポイントの上昇です。
方針を決めた企業が増え、実際に触っている企業も増えた。ここまでは、素直に読める話です。
列①:AIから、社内のものが見えるか
白書は、生成AIによる業務変革に向けて何を整備しているかも聞いています。そのなかの一項目が「生成AIに社内データを学習させたり、生成AIが参照可能なデータベースを構築したりしている」です。
日本24.5%、米国57.2%、ドイツ54.4%、中国73.0%。
対米で32.7ポイント。利用率の差4.5ポイントの、7.2倍です。ここが今回いちばん開いていました。
この項目が指しているのは、要するにRAGのような、社内文書をAIから読める場所に置く作業のことです。モデルの契約でも、プロンプトの工夫でもありません。AIの側の話ではなく、自社の書類の置き方の話です。
列②:学ぶ場所があるか。金ではなく、場
同じ設問群の別項目、「業務プロセスの見直しや生成AI活用検討に必要なスキルやノウハウを学ぶ環境がある」。
日本39.9%、米国62.7%、ドイツ60.4%、中国71.7%。対米22.8ポイント差です。
ここで並べておきたいのが、すぐ隣の項目です。「生成AI活用検討に向けた予算や人員が確保されている」は、日本37.4%、米国50.0%、ドイツ41.5%、中国50.2%。ドイツとの差は4.1ポイントしかありません。
予算の項目では日本とドイツはほぼ同じ位置にいて、学ぶ環境の項目では20.5ポイント離れる。足りていないのは金額のほうではない、と読めます。もっとも、この二項目は同一回答者の複数回答なので、因果の向きまでは決められません。予算がついた結果として学ぶ場ができるのか、学ぶ場があるから予算の使い道が決まるのか、この表からは分かりません。
列③:桁がひとつ違う
三つ目は、他の二つと性質が違います。生成AI活用による業務変革の組織的な取組状況を聞いた設問で、「組織的な取り組みはない」と答えた割合です。
日本27.0%、米国1.4%、ドイツ4.9%、中国2.6%。
比率ではなく桁が違います。同じ設問の「わからない」も、日本7.4%に対して米国0.4%、ドイツ0.4%、中国0.7%。環境整備の設問でも「特に実施している施策はない・把握していない」が日本19.9%、他3か国は0.3〜0.7%でした。
回答者は、いずれの国も「企業全体の戦略等を理解する管理職以上」です。その層が「分からない」「把握していない」と答える割合が、日本だけ二桁になる。取組の有無より前に、取組の所在を答えられる人がいないという状態がここに出ています。
反証:日本が全面的に負けている、とは読めません
ここまでの3列だけを見ると単純な話に見えますが、同じ白書の別の表が、それを一度止めます。業務類型ごとに「導入効果があると感じる」と答えた割合です。
議事録・メール作成補助で、日本72.3%、米国42.6%。この一項目に限れば、日本のほうが29.7ポイント高い。
他の項目も並べます。社内ヘルプデスクは日本42.7%/米国43.5%、研究・商品開発は日本39.1%/米国47.5%、製造・生産は日本39.8%/米国44.1%、法務は日本28.8%/米国18.4%。米国は多くの業務で30〜47%台に散らばっていて、突出した項目がありません。日本は議事録・メールだけが70%台に立ち、あとは20〜40%台です。
形が違う、というのが正確な言い方だと思います。米国は薄く広く、日本は一点に厚く。「導入効果があると感じる業務はない」は日本6.0%、米国1.1%でした。
この形を「浅い」と読むか「一点突破」と読むかは、この調査だけでは決まりません。ただ、議事録・メール作成補助という業務が、社内データベースをほとんど必要としない業務であることは、指摘しておきます。列①の24.5%と、この72.3%は、たぶん同じことの表と裏です。整備しなくても効く場所を、先に取り切った。
留保:この数字が測っている相手
外部の調査値を自社に当てる前に、母集団を見ます。以前に同じ年に出た4つの活用率を並べ直した回で書いたことの繰り返しになりますが、ここでも同じ手順を踏みます。
今回の企業向け調査は、インターネットアンケートです。実施は2026年1月から2月。対象は「従業員10名以上、かつ2025年までにデジタル化の取組を開始した企業に勤務し、企業全体の戦略等を理解する管理職以上」。有効回答は日本515件、米国・ドイツ・中国が各309件。日本の内訳は大企業353件、中小企業162件です。
つまり「日本企業の86.4%」ではありません。デジタル化に着手済みという条件で絞られた企業の、管理職以上の回答者のうち86.4%です。日本の回答者の68.5%(353件/515件)は大企業でした。
もう一点、設問ごとに回答者数が違います。ここは検算する価値があります。業務変革の組織的取組(③)は日本n=497。環境整備(①②)は日本n=326。
497×(1−27.0%−7.4%)=326.0。米国も281×(1−1.4%−0.4%)=276.0、ドイツ285×(1−4.9%−0.4%)=269.9、中国303×(1−2.6%−0.7%)=293.0で、いずれも環境整備側の回答者数と一致します。白書に明記された記述ではありませんが、①②の設問は「組織的な取り組みはない」「わからない」と答えた層を除いて聞かれている可能性が高い、と読めます(この推定は本稿によるもので、白書の記載ではありません)。
そう読んだ場合、列①の24.5%は「何らかの組織的取組がある企業のなかで24.5%」ということになります。497件の全体に戻して概算すると、326÷497×24.5%=16.1%。あくまで本稿の試算ですが、体感に近いのはこちらではないでしょうか。
保留つきの結論
この白書から自社に持ち帰れるものは、一つだけだと思っています。
次に測るのは、利用率ではありません。いま社内にある文書のうち、AIから読める場所に置いてあるものが何本あるか。それだけを数えてみることです。共有ドライブの奥にあるPDFは、置いてあるだけでは読めません。フォルダ名でしか見分けがつかない議事録も、同じです。
数えたあとに何をするかは、数えてから決めればよい話です。24.5%という数字が伝えているのは、多くの日本企業がまだ数えていない、ということのほうだと読んでいます。
ただし、これは4か国3,000件強のアンケートから読み取れる範囲の話です。1年で31.2ポイント動いた項目がある以上、来年の同じ調査でこの3列がどう動くかは、いまの時点では分かりません。次に確かめるべき問いは、この差が構造なのか、単なる時差なのか、です。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.03
本記事はAI編集部が執筆しています。掲載の判断と内容の責任は編集責任者が負います。誤りを見つけられた場合はお問い合わせからご指摘ください。訂正の手順は訂正ポリシーに定めています。
参考にした主な出典
・総務省「令和8年版情報通信白書(概要)」(2026年7月公表)——第I部特集「AIの進展がもたらす多面的影響」。企業向けアンケートはインターネット調査、実施期間2026年1月〜2月、対象は従業員10名以上かつ2025年までにデジタル化の取組を開始した企業に勤務する管理職以上、有効回答数は日本515件(大企業353件・中小企業162件)/米国・ドイツ・中国 各309件
・同資料より引用した数値:生成AIを一つ以上の業務で利用している割合(日本86.4%/米国90.9%/ドイツ91.6%/中国98.1%、n=477/308/308/308。2024年度調査は日本55.2%/米国90.6%/ドイツ90.3%/中国95.8%)、活用方針の策定(日本68.9%、2024年度49.7%)、業務変革に関する組織的な取組状況(「組織的な取り組みはない」日本27.0%/米国1.4%/ドイツ4.9%/中国2.6%、「わからない」日本7.4%/米国0.4%/ドイツ0.4%/中国0.7%、n=497/281/285/303)、環境整備の状況(「生成AIに社内データを学習させたり、生成AIが参照可能なデータベースを構築したりしている」日本24.5%/米国57.2%/ドイツ54.4%/中国73.0%、「業務プロセスの見直しや生成AI活用検討に必要なスキルやノウハウを学ぶ環境がある」日本39.9%/米国62.7%/ドイツ60.4%/中国71.7%、「生成AI活用検討に向けた予算や人員が確保されている」日本37.4%/米国50.0%/ドイツ41.5%/中国50.2%、「特に実施している施策はない・把握していない」日本19.9%/米国0.7%/ドイツ0.7%/中国0.3%、n=326/276/270/293)、業務類型ごとの効果実感(議事録・メール作成補助 日本72.3%/米国42.6%、社内ヘルプデスク 日本42.7%/米国43.5%、研究・商品開発 日本39.1%/米国47.5%、製造・生産 日本39.8%/米国44.1%、法務 日本28.8%/米国18.4%、「導入効果があると感じる業務はない」日本6.0%/米国1.1%)
※ 設問ごとの回答者数の一致から環境整備の設問の対象層を推定した箇所、および326÷497×24.5%=16.1%の概算は、いずれも本稿による計算です。白書に記載された数値ではありません。
※ 白書の個人向け調査(有効回答 日本1,236件/米国・ドイツ・中国 各624件)では、日本の生成AI利用経験率は2025年度調査で58.8%(2024年度26.7%)と報告されています。本稿では企業向け調査のみを扱いました。
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