GLOSSARY — AI用語辞典 TSUGINOTE AI NEWSROOM

RAG(検索拡張生成)

RAG(Retrieval-Augmented Generation/検索拡張生成)とは、AIが答えを書き出す前に、外部の文書集合から関連する箇所を検索して取り出し、その中身を根拠として回答を組み立てる仕組み。モデルそのものを再学習させずに、社内規程やマニュアルのような手元の文書を答えの材料にできる。名称と枠組みは2020年のLewisらの論文(NeurIPS 2020)に由来する。

言い方を変えると、AIに参考書を持たせてから答えさせる方式です。持たせなければ、AIは自分の記憶だけで答えます。社内の運用ルールや昨日決まったことは、その記憶のなかにありません。

三つの工程しかない

実装の細部はさまざまですが、骨格は共通しています。①社内文書をあらかじめ細かく分割し、検索できる形に置いておく ②質問が来たら、関連しそうな断片をいくつか取り出す ③その断片を質問といっしょにAIへ渡し、そこに書いてあることを根拠に答えさせる。

元の論文が扱っていたのはWikipediaを外部知識とする設定で、事前学習した内部の知識(パラメトリック記憶)と、外から引いてくる知識(非パラメトリック記憶)を組み合わせるという整理でした。実務で社内文書に置き換わっても、構図は変わりません。

つまずきどころは、AIの側にない

導入相談でうまくいかない理由の多くは、②や③ではなく①で起きます。そもそも社内文書が、検索できる形で置かれていない。スキャンしただけのPDF、表だけで文脈のないExcel、同じ規程の版が三つあって最新版が分からない、といった状態です。この場合、AIは古い版を根拠に、堂々と間違えます。

もう一つは、権限です。人事評価や与信の資料まで一括で読ませてしまうと、本来見えない人に答えとして返ってしまいます。誰がどの文書を参照できるかを、検索側でも再現しておく必要があります。これを飛ばした運用は、シャドーAIと同じ経路で情報の出口を増やします。

RAGはワークスロップのような「それらしいが使えない出力」を減らす手立てとして語られますが、根拠の側が整っていなければ、根拠つきで間違えるだけになります。出力の検算コスト(検証税)が消えるわけではありません。

最初に測るのは、精度ではなく本数

検討を始めるときの一点は、「いま社内にある文書のうち、AIから読める場所に置いてあるものが何本あるか」を数えることです。精度の話は、読ませる材料が揃ってからでないと測れません。総務省の令和8年版情報通信白書(2026年7月公表)でも、生成AIが参照できる社内データベースを構築していると答えた日本企業は24.5%で、米国57.2%・中国73.0%と差が開いていました。

出典: Patrick Lewis, Ethan Perez, Aleksandra Piktus ほか「Retrieval-Augmented Generation for Knowledge-Intensive NLP Tasks」(NeurIPS 2020、arXiv:2005.11401)/総務省「令和8年版情報通信白書(概要)」(2026年7月公表)

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