生成AIの社内ルール、Wordまで作ります。
「とりあえず使っていい」と言ったきり、どこまでが良くてどこからが駄目なのか誰も決めていない。生成AIの導入でいちばん多く詰まるのはここです。7つ選ぶと、13条と附則、使ってよいサービスの別表、入力可否の早見表、導入前に決めることのチェックリストまで組み上がります。
選んだ内容はどこにも送信しません。Wordファイルの組み立てまで、すべてお使いのブラウザの中で行われます。当サイトのサーバーにも運営者にも届きません。出来上がるのはたたき台であって、法律上の助言ではありません。自社の契約・業法・就業規則との整合は、必ず法務部門や顧問の専門家にご確認ください。
1. 選ぶ
7問。該当するものが無ければ飛ばして構いません(その条がそのぶん短くなります)。
業種ごとに、上乗せで書いておいたほうがよい条文が変わります。
規模で変わるのは、相談先の書き方と教育のやり方です。小さいほど「誰に聞くか」を1人に決めたほうが回ります。
ここを決めずに始めると、個人契約の無料版に社内文書が流れます。いちばん揉める1問です。
選んだものが、そのまま「入力してはならない情報」の条文と、別表2の早見表になります。
用途ごとに、出来上がったものの確認の仕方が変わります。
実務でいちばん抜けるのがここです。業務委託や派遣の方は就業規則が及ばないので、契約書側にも同じ内容を入れる必要があります。
ここは会社ごとに答えが割れます。選ばなければ、その条は「決めていない」ことが分かる書き方で残ります。
2. 受け取る
Wordで保存すると、見出しのついた文書として開きます。< >は自社の値に置き換える欄です。
上の設問をひとつでも選ぶと、ここに全文が出ます。
3. なぜこの並びなのか
条を13に絞った理由を、条ごとに書いておきます。読まずに使っても構いません。
目的を最初に置く
禁止事項から始まる文書は、読んだ人に「使うな」としか伝わりません。生成AIの社内ルールでいちばん多い失敗が、これで誰も使わなくなることです。何のために使うのかを先に書くと、あとに続く禁止が「その範囲で安全に使うための線」として読めます。
適用範囲を2番目に置く
社内規程は、原則として雇用関係のある人にしか効きません。派遣スタッフの就業条件は派遣元との契約に、業務委託の方の義務は業務委託契約に紐づきます。**規程に名前を書いただけでは足りない**ので、条文の中に「契約側にも同じ内容を入れる」と明記する形にしてあります。
使ってよいサービスで入口を1つにする
どのサービスを使うかを決めないまま「気をつけて使ってください」とだけ通達すると、無料版・個人契約・ブラウザ拡張が同時に社内へ入ってきます。入口を会社契約に寄せておけば、入力したデータの扱いも、後から止める手段も、そこ一か所で効きます。別表1を空欄で置いてあるのは、ここを埋める作業がそのまま導入作業になるからです。
入れてはいけない情報は、選んだものだけを並べる
一般論として「機密情報を入れないこと」と書いても、現場では判断がつきません。自社が実際に扱っているものを名指しで並べたほうが守られます。個人情報保護委員会は生成AIサービスの利用について、個人情報を含むプロンプトを入力する場合は利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確認すること、およびあらかじめ本人の同意を得ずに個人データを含むプロンプトを入力し、それが応答の出力以外の目的で取り扱われる場合は法に違反する可能性があることを注意喚起しています。
出来上がったものの確認を、用途ごとに分ける
確認のしかたは用途で違います。調査なら出典に当たる。コードならライセンスと脆弱性を見る。画像なら、既存の著作物に似ていないかを見る。文化審議会著作権分科会の法制度小委員会は「AIと著作権に関する考え方について」で、開発・学習の段階と、生成・利用の段階とでは行われている利用行為が異なり、関係する条文も異なるため分けて考える必要があるとしています。同資料は法的拘束力を持つものではなく、特定の技術に確定的な評価を与えるものでもない、とも明記されています。
記録と教育を、別の条に分ける
記録を取るかどうかは、事故を追える利点と、相談ごとを入れなくなる副作用が正面からぶつかります。どちらにも理由があるので、条文としては「決めた/決めていない」がひと目で分かる形に残しました。教育は別条です——ルールを配っただけでは読まれないので、配布と教育は工程として分けます。
相談先に名前を1つ書く
実務でいちばん効くのがここです。「判断に迷ったら誰に聞くか」が決まっていない規程は、迷った人が自分で判断して終わります。部署名ではなく担当者名まで書いてください。
違反時は淡々と、改廃は最後に
罰則を重く書くほど、事故が起きたときに報告が上がってこなくなります。生成AIの事故は、早く分かれば取り返せるものが多い種類です。最後の改廃条は、この分野の前提が1年で変わるためで、見直す頻度を先に決めておかないと更新されないまま残ります。
決めておかないと、必ず後で揉める3つ
出力には入れていません。会社ごとに答えが割れるところだからです。
1. どこまで直したら「自分が書いた文章」か
生成した文章を8割そのまま使った人と、骨子だけ借りて全部書き直した人が、同じ「AIで作りました」になると評価が壊れます。線を引くか、引かないと決めるか、どちらかをはっきりさせてください。
2. 人事評価に使うか
採用の書類選考や人事評価に生成AIを使う場合、判断の理由を説明できる状態を保てるかが問われます。使わないと決めるほうが早いなら、その旨を規程に1行足してください。
3. 取引先に伝えるか
受託した仕事の成果物に生成AIを使う場合、契約書に禁止条項がないかを先に見てください。書かれていないから自由、とは限りません。Q7で「取引先に伝える」を選ぶと、この確認が条文に入ります。
よくある勘違い
「社内で使うだけだから大丈夫」
入力した内容がどこへ行くかは、社内か社外かではなくサービスの設定で決まります。入口を絞る意味はここにあります。
「無料版でも中身は同じ」
モデルの性能は近くても、入力したデータの扱いは契約の種類で変わります。ここは各サービスの規約と設定を、導入の前に必ず読んでください。
「出典もAIが出してくれる」
出典らしい文字列が出ることと、そのURLが実在して内容が一致していることは別です。確認の条に「出典は開いて確かめる」と書いてある理由です。
根拠にした一次資料
いずれも公的機関が公開しているものです。日付は当サイトが確認した時点のものなので、実際に社内文書へ引くときは最新版をご自身で確認してください。
- AI事業者ガイドライン(第1.2版) 総務省・経済産業省。AIの開発・提供・利用にあたって必要な取組の基本的な考え方を示したもの。本編が「目指す社会」と「指針」、別添が「具体的な進め方」という構成。
- 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について 個人情報保護委員会。個人情報取扱事業者が生成AIへプロンプトを入力する際の確認事項と、サービス提供事業者への注意事項を示したもの。
- AIと著作権に関する考え方について 文化審議会著作権分科会 法制度小委員会。学習段階と生成・利用段階を分けて整理している。法的拘束力を持つものではない旨が同資料に明記されている。
規程を作ったあと、実際に社内で回す仕組み(申請の受け方、記録の残し方、教育の教材、社内への周知)まで組むところで止まることがあります。そこは構築の相談で受けています。用語の意味だけ確かめたいときは用語辞典、各サービスの料金と性能の比較は生成AI料金×性能早見表にあります。
